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 魔女様の家に女の子を運び、手当しながら事情を聞いた。村でなにかがあったわけではなく、彼女自身の問題だったようだ。そしてそこには、私も知らずと絡んでいたらしい。 「なぜそう会いに来たがるのだ。危ない目に遭うかもしれないと分かっているはずだろう」  苦虫を噛み潰したような表情で魔女様は強く言った。なんのことはない。女の子は、ただ、私にまた会いたかっただけなのだ。昼間に森に入るとすぐに騒ぎになると思って、皆が寝静まった夜を狙っての行動だったらしい。 「だって、会いたかったんだもん……」  鼻をすすりながら、叱られた子供特有のふくれっ面になりながら、その子は繰り返しそう言った。魔女様はどうしたものかと困り顔になり、私は彼女の前に屈み込んで目線を合わせ、頭を撫でてやった。そして、あの首飾りを返してあげる。 「ありがとう。私も会いたかった。でも、危ないことはしないでね。ちゃんとこっちからまた会いに行くから」 「でも、私からも会いに来たい」  ひどく純粋に気持ちをぶつけられると、嬉しいやら困るやらで、魔女様も私もどうしたものかと顔を見合わせた。  問答を何度も何度も繰り返し、しぶしぶ女の子が納得してくれてから、私たちは彼女を村に送ることにした。魔女様は村に行くことを嫌がっていたが、「夜の森は危険なのでしょう?」という私の言葉に折れて、仕方なくといった様子で着いてきてくれた。 「勝手にうろうろするなよ」  魔女様がそう言って人魂を灯すと、女の子は目を輝かせてそれを見上げた。 「それ、お前にも」  女の子の前にも人魂を浮かべてやると、彼女はそれを触ろうとして追いかけ始めた。それをまた魔女様が「その脚で走るな。転ぶぞ」などと叱るが、二人共なんだか楽しそうに見えた。 「綺麗な服」  女の子は私と手を繋ぎながら歩き、先導する魔女様の服にも手を伸ばして触れた。夜を閉じ込めたようなワンピース。どことなく、ちらちらと星のような輝きが見える気もする。 「ああ……。そいつの母親からもらったものだ。汚すなよ。変わりはない」  言ってやんわりと、女の子の手を服から遠ざけた。
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