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村に着くと、女の子の両親は心底驚いた。娘がいなくなっていたことに気付いていなかったこともあるが、滅多にやってこない魔女が唐突に目の前に現われたことに、なによりびっくりしたのだ。
二人はなんとかしてもてなそうと言葉を選び始めたが、私と魔女様は丁重に断った。
「また来てくれる?」
女の子は不安げだった。私は笑顔でうなずく。
「魔女様も、また会える?」
急に自分のほうに話が向いて、魔女様は驚いた顔をした。
「……機会があれば」
そっぽを向いてぼそりと言うと、女の子は嬉しそうに駆け寄ってきて、魔女様の頬にキスをした。魔女様はまた驚いたようだったが、なんだか複雑な表情をして女の子を見つめていた。
女の子の家を去り、村の出口へと向かう。騒ぎに気が付いたのか、他の村人が何人か様子をうかがいに外に出てきた。
「早く戻ろう」
それを見た魔女様は早足で歩き出した。私は慌ててそれについていき、門を出てから振り返る。魔女の姿を目にした人々はどこか興奮した様子だったが、あまり騒ぎ立てることはしなかった。
「あの子に好かれたみたいですね」
私はそう言うが、魔女様は反応しなかった。
「あの首飾りのおかげで、あの子の死病も遠ざけられましたし、それで憧れていたのかもしれませんね。会いたかったのは、私だけではないでしょう」
「運がよかっただけだ」
身を切るような冷たい声で、彼女はようやく返事をした。
「今回無事だったのもな。下手をすれば、命を落としていた」
「そうかもしれませんね。でも……」
私の言葉を遮って、彼女は言い募った。
「なんでそう、私に会いに来たがるのだ。お前の母親もそうだった。危険があることは分かっているはずなのに。……あんなことは、もう、二度と御免だ」
それから魔女様は口を引き結んで押し黙り、私もただ黙々と彼女の隣を歩いた。
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