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あれから数日後、女の子の様子を見に村に行ったが、やはり村人たちは魔女様に対して悪感情を持ってはいなかった。女の子も元気に村の中を駆け回り、また魔女様に会いたいと私にせがんだ。
私が持ってきた品々を村に贈ると、いくつかの食べ物を分けてくれた。いつも通りの穏やかなやり取り。そして村の人々は、魔女様の話になると口を揃えて、
「またときどき、顔を見せて欲しいなあ」
と言い、しみじみと彼女のことを思うのだった。
その日の帰りは日が暮れる頃になった。少し遅くなってしまったなと思いながら玄関の扉を開けると、悲鳴じみた声が聞こえてきた。
慌てて魔女様の寝室に入ると、彼女がひどく狼狽した様子でベッドの上で泣いている。悪夢を見たのだろう。夕べに目覚めた彼女は、こうして不安定になって震えていることがよくあった。そしてそのたびに、私を抱きしめて、
「ごめんね。ごめんなさい」
と、ひとしきり泣きながら謝り続けるのだ。
私は彼女の背をそっと撫でながら、それが収まるのを待つ。彼女の鼓動を感じながら、鼓動しない自分の胸を実感する。存在は消えなくとも、命は消えてしまったこの肉体のことを。
そして改めて誓うのだ。彼女が自分の存在を許せるようになるその日まで、永遠のこの時間をもってして、永遠の中に生きる彼女を支えてあげようと。一緒にいるのが私でいいのかと疑問に思うことはあるが、望まれているのだと分かっているし、なにより彼女を放っておくことは私にはできなかった。
ふと、衣装棚に入っているあのワンピースが目に入った。母が作り、手土産として持ってきた魔女の服。私にとっては母の形見でもある。この人は一体どんな気持ちで夜を翔けているのだろうと思い、胸を痛めた。
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