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 キッチンへ戻ると、コウモリのような使い魔が鍋の中身に興味津々の様子だった。その姿には頭がなく、身体に小さな目と大きな口が縦についていた。今にも飛び込んでしまいそうなそれを追い払うと、木皿に三人分のスープや肉料理、サラダをよそっていく。 「また使い魔の分まで用意したのか?」  大あくびをしながら魔女様がご登場した。夜の色をしたゆったりめのワンピースに身を包み、長い髪はゆるくサイドテールにまとめている。 「この魔物は食べなくても平気だって言ってるだろうに」  そう言いながらも、サラダの中からトマトをつまみ出し、使い魔に向けて差し出した。キーキーと声を上げながら使い魔はそれにかぶりつき、唇のない口で荒ぶる獣のように咀嚼する。トマトの汁で濡れた口の周りを、長い舌でべろりと綺麗に舐めた。 「可哀想じゃないですか。私だって食べているのに、ひとりだけ除け者にするなんて」 「気にしすぎだ。それに、お前に食事を許しているのは、ひとりで食べるのがなんとなく気まずいからで……」  そこまで言ってから、彼女は自分の発言のおかしさに気付いたらしい。沈黙し、ごまかそうとするように、フォークに刺した肉を無言で使い魔に突き付けた。コウモリもどき君が嬉しそうにそれをガツガツと平らげるのを見届けて、私は口を開いた。 「ダメですか?」 「そうは言ってない。別に構わん」  私がエプロンを脱いで席に着くと、彼女はそれを待っていたかのようなタイミングで食べ始めた。
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