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「この肉、ここで獲ったものじゃないな」
一口食べて彼女はそう言った。
「また村に行ったのか?」
「はい。薬とか、森の奥で採れたものを持っていったら、お礼に頂きました」
「様子はどうだった」
「静かなものでしたよ。ここ最近は平和なものだって、村長が。私に懐いてる例の女の子も元気で、私がここに帰るのを嫌がられました」
私の答えに、彼女は「そうか」とだけ答えると、無言ではあったが美味しそうにその肉を頬張った。
「村長、あなたのことを気にされてましたよ」
「……余計なお世話だな」
ふん、と鼻を鳴らす彼女だったが、その瞳が揺れたのを私は見た。
「私のことなど気にせず、村のことだけを考えていればよいものを。お前もだぞ。私の身の回りのことより、自分のことを考えろ。ここには使い魔だっているんだ。別にお前が必要ってわけじゃないんだからな。村に帰ったっていい。お前を慕ってくれる子だっているんだしな」
「分かっていますよ」
私がにっこりと笑みを浮かべて見せると、彼女は気まずそうに目を逸らした。
「そうだ。あの子、魔女様の作ってくれた首飾りを今も大事にしているようですよ。おかげで病魔も退けられたようですし」
「あれか。そんなにいいものではないんだがな。まあ、悪いものでもない」
つっけんどんな態度をとろうとしながら、今にも顔がにやけそうである。まったく素直じゃない反応に、私は吹き出すのを我慢するので大変だった。
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