「常世国」からの化身の一寸法師

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」 その日から、さる大家で働くことになった。 ある日、大家の主から娘のお供でお宮参りに旅に出ることになった。 「おいこらー」 大声で叫ぶものがあった。 見上げると、天を突くような大鬼が 「そこの娘、俺についてこい」 と無理やりに娘を抱え込み連れ去ろうとした。 「こら鬼よ、そう簡単にお嬢様を渡すわけにはいかん」 構えて、鬼に戦いに立ち向かった。 「こんな一寸法師は飲み込んでやる」 と手を出して一つまみして口の中に放り込んだ。 喉から、腹の中に入った「一寸法師」腹の中で暴れまわり、針の剣で突き刺すと、鬼は痛い。痛いと転がり舞わり、 「止めてくれ、助けてくれ、降参、降参だ」 と言って大謝り、「一寸法師」を吐き出した。 鬼は逃げ出し、そこに落としていった「打ち出の小槌」を振って自分の体をどんどん大きくしていった。 ついに身長は六尺(182センチ)にもなった。 「娘さんを私の嫁として下さい」 大家の主にお願いをした。 「お前は、勇気を持って我が娘を助けてくれた。娘を大切にしてくれよ」 言って快く娘を「一寸法師」は立派でたくましい青年なり、金銀財宝も打ち出の小槌を振って手に入れて、末永く暮らしたという。 ふと、一寸法師は、あのお爺さん、お婆さんを思い出し、 「そうだ、お爺さんとお婆さんを呼びに行ってやろう」 と思い、お爺さん、お婆さんの住む所にいった。 大きな立派になった一寸法師を見て、 「どなた様でございますか?」 怪訝そうに眺めた。 「私だと、いつかお世話になった小人、一寸法師だよ」 「あー、あの小さな一寸法師」 と大喜びで都に行って出世した一寸法師を武勇伝に聞き、 「二人も一緒に都に行こう」 と誘ったが、二人は断って、 「こんな、田舎暮らしでも、わたしら二人は幸せだよ」 と笑って、大きく成った一寸法師を見送った。 この「一寸法師」は異次元の世界の「常世国」から差し向けらえた「化身」だった。
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