夢を運ぶ猫

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 それは空が紅に染まった頃。  赤く染まった太陽がこれでもかと俺に照りつける。  そこにあったのは―― 「うわぁ……」  赤く染まった商店街。光をはじく川に、長く伸びる影。  紛れもない絶景はまさに『夢』のようだった。  そんな景色を前にして、俺はもうため息しか出てこない。  ここまで裏山を登ってきた疲労や、時間の感覚なんてどこかに行ってしまった。  彼女は俺の足に頬をすりつけてきた。 「あはは、すごいや」  お礼としては足りないかもしれないが、彼女をめいっぱいなでてやる。  彼女も彼女で、まんざらでもないご様子だった。  そうして彼女と、1人と1匹で日が沈むのを待った。  これは、子猫の運ぶ『夢』のお話だ。
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