忘れ形見

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トシ子ばあちゃんは、30年前にじいちゃんを病気で亡くしてから女手一つで3人の子供を育て上げた。 その頃はばあちゃんではなかったが、今となれば孫が12人もいるばあちゃんになった。 その子供達が就職の為に家を出てからはずっと一人暮らしの生活をしている。 じいちゃんが死んでからがむしゃらに生きてきたトシ子ばあちゃんは一人暮らしになった時、やっとゆっくりした生活が送れると思い、一人暮らしが寂しいと思う気持ちよりも、ほっとする方が大きかったのを今でも覚えている。 しかし、若いときは寂しさなどあまり感じなかったのに、年を取ると一人暮らしというのはだんだんと寂しさを感じるものなんだと身を持って実感している最中である。 この寂しさを少しでも軽くしようと、近所のお宅で生まれた猫をもらうことにした。
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