目覚め

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「意識が戻りました」 あたしがその知らせを受けたのは定時間際のことだった。 逸る気持ちを押さえ、彼の待つ病院へと向かう。 病室の殺風景なベッドの上に半身を起こした 彼の横顔を見た時には、世の全ての神に感謝の祈りを捧げたい気分だった。 頭に巻かれた包帯は痛々しかったけれど 窓の外を眺める色白の頬には、薔薇のような赤みが差していた。 「良かった…ずっと会いたかったよ」 瞳を潤ませ、満面の笑みを浮かべたあたしの方に 物憂げな視線を流した彼は、無表情のままひと言・・ 「誰?」 と呟いた。 表情を曇らせたドクターは、呆然と立ち竦むあたしに 「気を確かに、聞いてください。残念ですが彼は全ての記憶を  失いました…」 嘘…嘘でしょ… 共に悩み、共に学び、時には喧嘩しながらも笑い合い 慰め合い、共に高めあってきた… その全ての記憶がなくなってしまった? 足元が崩れ落ちるような衝撃… あたしの身体は大きく揺らいだ。 「しっかりしなさい」 ドクターはあたしの肩をしっかり掴むと 「彼は必ず元に戻ります。私たちも最善を尽くしますので  あなたも彼を支えてあげて下さい」 …そうだ 落ち込んでなんていられない 彼を支えられるのはあたしだけなのだから… 記憶も思い出も、少しずつ また重ねていけばいい 大切なのは、彼がここにいる事 ただ それだけでいい・・        完 →あらすじへGO=͟͟͞͞( ๑`・ω・´)                      
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