雪鬼

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 着替えて脱衣所を出たところで熊崎とばったり会った。他の二人は、と聞くとまだ着替えているらしい。  正直熊崎と二人で話をしたことはないので話題に少し困る。俺にとっては完全に津田の友人である濱田の友達、という認識だ。大学でも話す事はほとんどない。加えて彼女は内向的な性格らしく社交的な会話というものが苦手なように見えた。だからだろうか。 「あ、あの、牧瀬君。さっきの雪鬼って、どんな鬼だと思う?」  見事に俺の地雷を踏んでくれる。それは彼女のせいではないし、向こうとしても必死に話題を探した結果だろう。というか、それしか今の俺たちに共通の話題はない。できればスキーの話題にしてほしかったが熊崎はスキーがそれほど上手くはなかった。スキー板は自分で履けたのでまったくの初心者というわけでもないようだったが。 「あー、俺も簡単にしか聞いてないから詳しくは知らないんだよね。なんだろうな、雪女みたいな感じなのかな。あるじゃん雪女の伝説」  今思いついた事をてきとうに言えば熊先はそっか、と納得したようだった。怖いね、とか雪多いと大変だもんね、と言ってくる熊崎に適当に相槌をうつ。 できれば雪鬼の話題から遠ざけたいな、と思って世間話をしていると濱田たちが風呂から出てきた。     
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