99人が本棚に入れています
本棚に追加
その年は例年にない大雪となり、避難勧告が出るほどだった。あまり人口の多くない町だ、集まる場所は小学校の体育館だった。備え付けの暖房などあるはずもなく、各教室にある石油ストーブをすべて持ってきて皆で小さく集まって暖をとっていた。体育館は天井も高いので、ストーブを何台集めてもすぐに熱が逃げてしまいあまり暖かくない。体育館にテレビなど娯楽があるわけでもなく本当にやる事がなかった。
するとヒマだから年寄りは昔話を始め、雪鬼の話になった時にそんなつまんない話じゃないと言い出す奴がちらほら出て来る。人間を頭から食べる、五体バラバラに切り裂いて行く、返事をした奴を殺してそいつそっくりになって入れ替わる、他にもたくさんあった。
年寄りはなんだその話は、と皆呆れていたが子供にとってはそういう展開の方が面白いに決まっている。一応雪の日に訪ねて来る奴がいて返事をするな、という部分は共通しているが鬼散らしの言葉や南天の使い方をまったく知らない奴らが多くて驚いたくらいだ。
化け物をものすごく悪い奴として描かれている話が多かったが、それでもどこかかっこいい、と思わせる要素も残っている。いじめっこをやっつけてくれる、など完全にいじめられっ子や気が弱いやつが考えたのだろうなと思う設定だ。
皆、思い思いに自分の好きな設定を盛り込んだ理想の「雪鬼」を作り出していた。
最初のコメントを投稿しよう!