雪鬼

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 大学一年は思いっきり遊ぼうと思っていた。どうせ2年からは研究課題だらけ、3年から4年はあっという間で卒論と就活に縛られて自由に遊べないとバイトの先輩が嘆いていたからだ。遊ぶなら絶対一年の時だぞ目いっぱい遊んでおけよ、と念を押されたのでこれやりたいな、という具体的な案をいくつか考えていた。  もともとスキーをやっていた俺は新しく仲良くなった友達とスキーに行く計画を立てた。聞けばスキー上級者とのことだ。レベルが同じくらいの奴らと行くスキーは楽しい、一人でも初心者が多いと、申し訳ないがそれに合わせないといけないのでちょっと気を遣うのだ。  近くのスキー場でも良かったが質の良い雪が降ると評判のとある県に行ってみよう、と飛行機を使った2泊3日旅行になった。出身地も様々で雪に慣れている奴とまったくの初心者で構成されたメンバーは全員で6人、男女3人ずつだ。計画したのが俺なのでなんとなく俺が中心となって行動していた。  スキーに来たのは良かったが、初日である今日は予想以上に雪が降り早々にスキーを切り上げて旅館に向った。この辺りは質の良い雪を求めてスキー客がよく来るので、冬は大切な収入源になっているらしい。下町のような感じで大型施設などはないが、温泉と料理と飲み屋は充実していた。  海外から来る客も多いようで、看板やメニューには英語も書かれている。雪のない国、オーストラリアの人が多く、彼らは気さくに話しかけてくる。英語が一応できる俺は挨拶をしたり、世間話をしたりで結構楽しい。  この辺りではおそらく一番大きいであろうその旅館に着いたのは夕方で、夕飯まで時間も余っているのでまずは温泉などを楽しもうと各自好き勝手に行動を始める。     
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