12人が本棚に入れています
本棚に追加
不機嫌な私とご機嫌な先輩
「え…蒼井先輩?何…ですか、これ…」
自分が戸を開けた部屋の中、目にした光景に立ちすくむ。
窓から差す光に透けて亜麻色に見える髪を揺らし、長身の影が振り返った。
「おっ、緋山紅葉本人だ」
「何で私の名前ーってか、いやいや、何でそんな冷静なんすか、下手したら犯罪現場ですよねこれ」
「何が?」
「その後ろの壁一面に貼ってある、おびただしい数の私の写真ですよ!」
ここは高校の写真部部室のはずだ。
私が入部届けを手に戸を開けたのが四十秒程前のこと。
そこにあったのは、入部動機にもなった憧れの先輩と、なぜか自分の写真が壁一面に貼ってある恐怖空間だった。
切実に四十秒前に戻りたい。
むしろ入学から、受験から見直したい。
なんだこれは。
憧れの先輩は、自分のストーカーでした。
最初のコメントを投稿しよう!