不機嫌な私とご機嫌な先輩

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不機嫌な私とご機嫌な先輩

「え…蒼井(あおい)先輩?何…ですか、これ…」 自分が戸を開けた部屋の中、目にした光景に立ちすくむ。 窓から差す光に透けて亜麻色に見える髪を揺らし、長身の影が振り返った。 「おっ、緋山(ひやま)紅葉(もみじ)本人だ」 「何で私の名前ーってか、いやいや、何でそんな冷静なんすか、下手したら犯罪現場ですよねこれ」 「何が?」 「その後ろの壁一面に貼ってある、おびただしい数の私の写真ですよ!」 ここは高校の写真部部室のはずだ。 私が入部届けを手に戸を開けたのが四十秒程前のこと。 そこにあったのは、入部動機にもなった憧れの先輩と、なぜか自分の写真が壁一面に貼ってある恐怖空間だった。 切実に四十秒前に戻りたい。 むしろ入学から、受験から見直したい。 なんだこれは。 憧れの先輩は、自分のストーカーでした。
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