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衝撃のファーストインパクトから数ヶ月。
ストーカー改め、蒼井先輩はモデル撮影の最中だ。
蒼井爽史朗。
高校二年生。
十三歳のときに大手印刷機器メーカー主催の写真コンテストで大賞を受賞。
その後も若手写真家の登竜門と言われる賞を数々受賞し、今ではフォロワー数ミリオン超えのインスタアカウントに、企業から仕事のオファーが絶えない。
眉目秀麗、長い手足に豹のようにしなやかな体躯。
本人がモデルをした方がよいだろう美男子が、何を好んでか私の写真を撮っている。
放課後の藤棚の下、立てた片膝に肘をあて頬杖をつく。
うつろな目で風に揺れる蔓を眺めた。
「蒼井先輩って暇なんすか」
「三日後締め切りの画像まだ補正してないし、この間撮影分のもセレクトしてない」
「仕事して下さい」
「これは趣味。公私分けるタイプだから。緋山、そのまま上向いて」
言われるがまま顔を上げる。
少し傾いた日差しの眩しさに目を眇めれば、シャッター音が聞こえた。
(変なとこ撮るよな)
こうなった原因は入学当初に遡る。
ストーカーを目の当たりにした私は、入部届けを手に入部拒否をするという矛盾行動を起こした。
しかし先輩は私の手から入部届けを取り上げ、部長という職権乱用で速入部受理。
私が先輩の名前を知っていたことから、ファンであろう事を見抜いた。
そして「好意を持った部員をモデルとすることはストーキング行為ではない」、などという捏造した免罪符を掲げた超理論により、入部させられ現在に至る。
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