不機嫌な私とご機嫌な先輩

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「自然にして。こっち気にしないで」 「…もっと美人とかイケメン撮った方がよくないですか」 「人間に興味ない」 「私は人間にカテゴライズされてない可能性?」 「はあ……」 ため息を吐いて一眼レフを片手に、校舎の影からのそりとこちらに向かってくる。 藤棚から(こぼ)れる日だまりに影が差した。 目の前にしゃがみこんだ先輩の親指が、目元に触れる。 「その野性味ある目がおれのお気に入り」 「三白眼(さんぱくがん)ですけど」 「そういう一言で片付けるのは味気ない」 にやりと笑った顔がなんとも色っぽい。 照れ隠しに(うつむ)いてから立ち上がれば、しばらく先輩がこちらをじっと見ていた。 「緋山ってなんかやってた?」 「なんかって?」 「スポーツとかダンスとか」 「ああ、フィギュアスケートやってました。中二でやめましたけど」 「ほーなるほど」 少し驚いた様な顔をして(うなず)く先輩がそのまま言葉を継いだ。 「じゃあバレエも?」 「やってました。基礎にバレエがあると動きも美しくなるんで。ってよくわかりましたね」     
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