不機嫌な私とご機嫌な先輩

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帰り支度を整えて草臥(くたび)れたスクールバックを背負う姿に、この人も学生なんだなと改めて思う。 「どうした?」 「先輩も、そうすると高校生って感じですね」 「いつもどう見えてる」 「普段は仙人か、宮司や牧師のような人と話している気分ですね。高校生らしさというか、若い(うるさ)さがないっていうか」 「ほんと…面白いな、おまえは」 ふっと吹き出した先輩は、口元に手を当て静かに笑った。 (こんな笑い方すらたまらないんだけど) こうやって駅までの道を歩けるのも、先輩のお気に入りでいられてるから。 この関係が心地いい反面、酷く虚しいのも事実。 黄昏時(たそがれどき)はセンチメンタルを倍増させるからいけない。
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