野晒し村

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 櫓に備え付けられた十メートルほどの木の梯子を、坂居が一段ずつゆっくりと上がっていく。 「気をつけて下さいね。落ちないように」  男がどこか暢気な口調で言う。  人形に手の届く距離まで梯子を上がると、坂居は少し躊躇しながらもその着物に手を掛ける。 「……」  強張った表情で見つめる私を見下ろし、坂居が大声で叫ぶ。 「人形です、楠木さん。良く出来てるけど」 「……そう、か」  安堵の息を吐いた後、私は男に話し掛ける。 「それにしても、驚きました。どうしてあんなことを?」 「ああ、これは魔除けみたいなものなんですよ。呪詛祓いの一種だと思って頂ければ」 「……『咒隠(のろいかく)し』、というやつですか?」  そう告げた私を見て、男は意外そうな顔をする。 「ほう、よくご存知で。確かにこれは『咒隠し』から身を守るための祭祀です。失礼ですが、あなたがたはどういった……?」  雑誌の記者だと告げて名刺を渡すと、男は納得したように何度も頷きながら目を細める。 「それでは、せっかくなら私の家で少し話しませんか? この神社の奥が社務所を兼ねて、私の住居になっているんですが」
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