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「実は、、、昨日から茉瀬と共に行方が分からなくなっていて」
瞬間、雅の片方の目がヒクリと動いたが、表情にそれ以上の変化は無かった。
ただ先を促すようにクロの腕の中で夏目を睨んでいる。
「明日人が外出を希望したんだ。
山へ行きたい、と。
車両に取り付けたGPSの反応はなく、二人のスマートフォンも電波が断たれている。
向かった県くらいは概ね分かるんだが、昨日は本州を縦断する線状降水帯が発生していただろ?
他県でも土砂崩れが起こっていることから、二人が何らかの災害に巻き込まれたと想定し、今朝から捜索を進めている」
少しの間を挟み、雅はクロの胸に頭を預けると『それなら』と呟いた。
「十三年前に僕のお母様が埋められていた場所を探してごらん、夏目。
近くに据えられた磐座の話をしたことがあるから、明日人はそこへ行ったのかも。
でも、、、」
甘える仕草で くすくすと笑う雅に、クロの顔が僅かに緩む。
「その山に行くまでの道は細くて急斜面ばかり。
磐座までたどり着く前に、二人共
土砂に埋まったかも知れない。
ねぇ、クロ。
お前もそう思うだろ?」
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