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─── 午後、 二人が到着したのは神野所有の邸宅だった。 立地としては神社と公園に挟まれ、比較的閑静であり、 昭和の初期からあるという屋敷の周囲は都心にあってオアシスのごとく、まだ3月の半ばだというのに、そこここで芽吹きの早い草花が彩りを添え始めていた。 家屋については外観に古き良き洋館の趣きを残すものの、リノベーションを経て屋内は現代モダンの様相に改められている。 「俺の部屋は二階にする。 明日人の部屋はそうだな、、、」 リビングの窓辺に立っていた茉瀬が振り返り、一階にある左右の部屋を眺めながら言うと、 「俺は一階がいいな。庭に面したこっち側の」 明日人は部屋の南にテラスがあり、そこから段差なく庭へと続く一階の角部屋を指差した。 「わかった。 では西側にある部屋は俺の仕事場にさせてもらおうか。 リビングは共有だ、私物を置くなよ」 家具から食器に至るまで夏目の手配で事前に用意されてると事前に知らされていたので、二人に何らの準備も必要はなかったのだが、到着後、生活用品が一人分多いことに明日人が気づき、 「なんかさ、、、備品が三人分あるような」 その直後、手に大型の鞄を下げた夏目 (あお)が『どう? 何か不足はない?』などと言いながらリビングに入ってきた。 「まさか」 夏目の思惑を察知した茉瀬(まつせ)がスーツ姿の貴人を()めつけるも効果はなかった。 夏目はは挨拶代わりに明日人の肩を軽く抱いた後、早速辺りを見回した。 「遅くなってごめんな、朝から診察が詰めてて、、、。 もう部屋決まった? ああ東側か。では僕は西側だな」 東部屋の前に明日人の鞄が置かれているのを了解すると、夏目はたった今茉瀬が仕事部屋と指定した部屋のドアを開き、荷物を置いて戻ってきた。 「夏目まで同居するとは聞いてない」 明日人が苛立つ茉瀬の不満をやんわり代弁したが、夏目は上着をソファに放り肩を竦める。 「神野会長に許可を頂いたから。 雅の了承も得たよ、勿論」 悪びれもしない態度は明日人には慣れたことだが、茉瀬には我慢がならない。
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