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「どの療法で試みるかな、、、」
茉瀬は独り呟きパソコンを閉じた。
暴力や物質、又は言葉で苦痛、或いは欲を刺激し潜在意識に働きかけるマインドコントロール。
程度の差はあっても解除には自信があった。
特に明日人の年齢が治療を優位にさせると見込んでいたからだ。
人の影響を受けない若者などこの世にそうはいない。
特に現代は危険回避能力を阻む閉鎖的生育環境の中、社会に揉まれず青年期を迎える子供達が多く、洗脳される領域が浅くて早い分、解くのも容易いのが特徴だ。
また精神科医としての催眠療法や認知行動療法等を用いた臨床治療などは初歩中の初歩とも言える。
とはいえ神野からの依頼にはパーフェクトで応えなければならない。
究極の手段として、茉瀬は治験まで漕ぎ着けている記憶のリセットという療法を準備していた。
これは被験者を一時的に臨死状態に近づけ、頭蓋骨に開けた穴から特殊な光を照射する、或いは瞼の上から海馬に浸透照射する外科的療法である。
元々は開頭手術によって初めて光を浴びた脳細胞が術後の患者に錯乱や妄想を起こさせる事象に着眼し、神野の資本の下、十数年前に研究を開始していたのだ。
照射の際に暗示、つまり新たなアンカーを重ねれば記憶の操作が期待できる優れた療法であったが、古いアンカーを消すまでには至っていない。
つまり、白川の記憶は消せてもアンカーは残るので、明日人に施す場合は他の記憶を併せて操作することになる。
「試してみるか」
リセット法の臨床試験はすでに十を超えている。
しばらく思案した後、茉瀬は過去同じチームの博士から受け継いだこの有力な治療法を第一候補に据えた。
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