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「アセクシャル(※)の俺を悪趣味の仲間入りにさせるつもりか。
冗談じゃない」
過去、一度でも他者に恋愛感情を抱いたり、性的欲求を求めたことはなかった。
それゆえ、神野の美しい生き物に対する性愛、いや慈愛すらも茉瀬には理解し難いのである。
自身のアセクシャルについて言えば、性的マイノリティが世間に認知される以前から知識として得ており、特に問題視もしていない。
身体の生理的機能としては精巣から精液が生産され、それが溜まれば出すだけのことである。
留意すべきは、勃起時に男女構わず人間を思い浮かべると萎えて排泄が遂げられなくなるため、事前に促進剤を利用することのみ。
医師としての良識を持たない茉瀬は毎回洋酒を並べた棚からバーボンを取ってグラスに注ぎ、口内にある錠剤を流し込む。
すると数分も待たず下半身が熱を帯び尿意とは違った吐精欲が現れるのである。
吐精欲が押されてくればすることは一つ。
トイレに行き片足を便座に乗せ、異様に硬く勃ち上がった陰茎を掴み擦りながら先端を下に向け体液を放つ。
排尿欲が膀胱から押し出されるのに対し、吐精欲はそれよりもやや体内の奥側から睾丸へと降り、陰茎へと上がって来るといった感覚であったが、排泄という括りでは同程度の快さだった。
※アセクシャル 他者に性的欲求を抱かない、性交渉に魅力を感じない性的少数者
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