無力

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無力

次の日も私はペットショップに寄ってみた。店の隅に置かれた大型犬を入れるのには少し小さい檻には昨日と変わらず澄んだ瞳のボーダーコリーが座っていた。ボーダーコリーは私のことを覚えていてくれたのか私が入店するとすぐに私の方を見て吠えながら立ち上がり頭を檻の蓋にねじ込み、出ようとしていた。そんなに私と遊びたいのかと思い、嬉しくて昨日と同じように私が目線を合わせ、手を差し出すとボーダーコリーも昨日と同じようにお手をして私を見上げた。他の犬や猫も見てみようと思い、私は店内を一周してみることにした。私が壁沿いのケースに近寄るとガラスの反対側からたくさんの小さな犬が一斉に吠えだした。それはなぜが歓喜の叫びと言うより救済を求める悲鳴のように聞こえて胸が痛んだ。よく見ると脱毛している犬や猫が何匹かいた。(ここにいる犬や猫たちは幸せなのだろうか)今まで気づかなかったが、トイレも汚れたまま、水がもう少しでなくなりそうな犬も何匹もいる。そこでふと思った、あのボーダーコリーがいつも私に向けてくるあの目は助けてくれと私に訴えかけていたのではないか、と。もしそうであったなら私には何もしてあげることができない。毎日ペットショップに通うことはできてもここから救い出してあげることはできない。私の母は動物が嫌いなのだ。そう考えるとなんだかそこにいるのが居たたまれなくなって私はペットショップを飛び出した。 それから一週間、私はペットショップに行くことができなかった。
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