ゆめにのまれる

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ゆめにのまれる

 眠ることが怖かった。  何気ない日常が明日も続くと、信じることができなかったからだ。目を閉じれば広がる闇に、恐ろしい怪物が潜んでいて、そいつがたちまち僕を食い殺してしまうのではないか。そんな思いで、怯えながら眠っては魘され飛び起きる。いつからこんなに眠りが恐ろしくなったのかは、思い出すことができない。少なくとも、幼い頃は、眠って明日を待つのが大好きだった。社会人になった今では、やっとの思いで朝を迎え、青白く焼けた空を見上げることでようやく眠れる。……仕事があるので結局は対して眠れないのだが。  そうして目覚めて、支度をして家を出て、仕事を終えればまた恐ろしい夜が来る。  明日は来るのか、暗闇に呑まれて死んでしまいやしないか、あるいは――――今の自分こそが夢で、眠ってしまえば二度と目覚めず、消えてなくなってしまうのではないか。  そんな子供じみた妄想をしながら、僕はまた、底の見えない眠りへと落ちてゆく。次に目が覚めたとき、変わらぬ朝が待っていることを願いながら。
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