アルからのプレゼント

1/4
476人が本棚に入れています
本棚に追加
/131ページ

アルからのプレゼント

夜少し遅めの時刻にドアがノックされる。 「ユーリ、居るかな?」 アルでした。 「はい!居ますよ~」 急いでドアを開ける。 「おかえりなさい!今お帰りですか?」 「そうなんだ。待っててと言っておいてこんな時間で悪かったな。」 アルが済まなそうに言う。 「全然大丈夫ですよ。私も先程まで作業していてやっと片付いたところです。お茶を出しますのでどうぞ。」 「あぁ。ありがとう。」 アルがソファーへ座ったところでお茶の支度をする。 「カモミールティーです。どうぞ。」 「いただくよ。」 そう言って一口飲む。 「ユーリ……明日の夕飯を晩餐会の練習も兼ねて食べに出掛けないか?」 随分ためてから要件を言うから何事かと思ったわ。 晩餐会の練習をさせてくれるのね。 「ありがとうございます!是非よろしくお願いします!ところでどこまで行くんですか?」 「それは明日のお楽しみだよ。お茶ご馳走様!」 そう言ってドアへ向かうアル。私も付いてお見送りをします。 くるりと振り返るアル。 「ユーリ、君がここに残る事を望んでくれて本当に良かったよ。ありがとう。」 「いえ、お礼を言わなければならないのは私の方です。居場所を与えてくれて本当にありがとうございます。そしてやりがいのある仕事をさせてくれて感謝しています。」 そう言うと、アルが一歩近付いてきて……しばらくの間抱きしめられる。 そして一言…… 「おやすみ」 そう言うとさっと離れて部屋を出ていかれました。 出る時に見えたアルの耳は真っ赤でした。 そんな私もゆでダコですが… ベッドに入りましたが眠れません。 何故でしょうか? カモミールティーも飲んだのに… アルとの出会いを思い出しました。 いきなりこの世界に来てしまい、心細い私に手を差し伸べてくれたのはアルでした。 はじめて会った時は王子様かと思いました。 家に行ったらいきなりフィアンセになっててびっくりしたっけ。あれからもう数ヶ月が過ぎて、あの頃はまさかこんな生活をおくる日が来るなんて思ってなかったな… アルの笑顔を見るとホッとする…… 取り留めもなく思考が散らかり出したところで私の意識は途切れた。
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!