第1章

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 僕は、そんな事を考えながら、しばらく公園の中を散策した。  少しだけ、元気になった。  あの子には、逢えなかったけど、逆にあの子のおかげで僕は、自発的に外に出て、散歩まで出来たんだ。  次の日から、僕は、毎日夕方になると、あの公園まで出かけて、散歩した。あんなに怖かった外の世界は、一度、勇気をもって飛び出してしまえば、生きていることを実感できる素晴らしい世界だと分かった。    自宅に戻った僕は、夕食の支度をしている母親に、こう言ってみた。 「母さん、僕、明日から学校行ってみるよ!」  母は、少し面食らった様子で、驚いていたけど、直ぐに満面の笑みを浮かべて、 「そう……無理しないで!本当に……」 「何だよ、母さん、泣いてるの!?」 「ううん、何だかとっても嬉しいだけよ!」  次の日から、僕は、中学校に復帰した。  最初は、人が怖かったけど、ひょっとしたら、あのトロンボーンの女の子に逢えるんじゃないか?そんな、淡い期待も確かにあった。 一週間、学校に通う事が出来た。僕は、あんなに嫌いだった学校を、少しずつだけど、好きになってきた。だけど、あの子は、学校には、居ない様子だった。  僕が、吹奏楽部に入部を決めたのは、学校に復帰してから一か月後の事だった。 「ようこそ、吹奏楽部へ!!」  顧問の先生が、そして、大勢の吹奏楽部の生徒たちから僕は、大歓迎を受けて、入部した。 「やりたい楽器は?」  顧問の先生に、そう言われて、吹奏楽の知識なんてまるでなかった僕は、しばらくの間、考え込んでしまった。 「ト、トロンボーンを、やりたいです……」  僕は、無意識にそう答えていたような気がする。 一か月後、学校生活にすっかり馴染んだ僕が、そこに居た。 部活の練習が終わってから、僕は、仲良しになったフルート担当の女子生徒に、聞いてみた。あの公園で、毎日、夕方トロンボーンの演奏をしていた少女の事を。 「そうだったんだ……あの子、死んじゃったんだよ……」 「えっ!?」  僕は、驚いて、そしてしばらく何も言えなくなってしまった。 「好きな人が、あの公園の近くに住んでるって……」 「でも、学校に来なくなっちゃったから、私が、毎日トロンボーンの演奏を、聴かせてあげるんだっ!!……そう言ってたの……」 「彼女は、どうして……?」 「先天性の難病だったみたい……余命も分かっていたみたいだよ……」 「……」
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