加奈ちゃんは、喜ばせたい

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加奈ちゃんは、喜ばせたい

「ホラ見て、おかーさん。算数で、また100点とったよ」 「まあ、すごいわ。加奈ちゃんは本当に頭がいいわね」  わたしがテストで100点をとると、おかーさんはとっても喜んでくれる。褒めてくれる。  だからわたしはいつでも100点をとるの。算数だけじゃなくて理科だって、社会だって。もちろん、全科目で――って言いたいところなんだけど、国語だけはちょっと苦手。漢字とか慣用句とか、文章理解もパターン化されてれば解けるんだけど、心情理解っていうの? 筆者の気持ちとか、登場人物の気持ちとか、そういうのがイマイチよくわかんない。もっとはっきり言っちゃうと、ちんぷんかんぷん。 「でもねぇ」 「国語、でしょ? 加奈ちゃんは国語が苦手だもんね」  わたしはランドセルからこっそりと国語の答案を取り出す。70点。可もなく不可もない点数。でも100点じゃない。 「わたし、答えを見ても、説明されても、登場人物の気持ちってよくわからないんだよ」 「そうなのね。加奈ちゃんは――共感力がまだ育ってないのかも知れないね」  共感力。えーと、『他者と喜怒哀楽の感情を共有する能力』。     
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