寝られない男

おれは読書灯で手元を照らして、パズルを解き始めた。隣のサラリーマン風の男が何度も寝返りを打つ。椅子に座っているので体を右に向けたり左に向けたりといった方が正確か。読書灯がまぶしくて眠れないのだろうか。気の毒だと思うが仕方がない。わめかれるよりはましだろう。そうこうしているうちに食べた物が胃の中に入ってきたのか、だんだん眠たくなってきた。

飛行機で眠れないというやつがいるがそれは乗り慣れていないせいだ。おれのように一週間に1回も乗っていると、慣れてしまってすぐに眠くなる。いつもはビジネスクラスの広い座席にゆったりと座っている。両手をひじ掛けに、両足を足置きにどんと乗せ、グッと背もたれをリクライニングすると連動して足置きがグーンと持ち上がる。体がより水平になり、ほとんどベッドに寝ているようなリラックスした感覚に陥る。すぐに眠りにつくことができた。ここで休息を取り、到着後すぐにビジネスに戻るというのがいつもの習慣だ。