寝られない男

7/12
前へ
/12ページ
次へ
だが、今日は寝られないのだ。今寝ておかないと到着後の取引先との会議に支障をきたすのではないかと危惧するが、寝てはいけない。そう寝てはいけないと思えば思うほど眠くなるのが人間の性か。まぶたが重く閉じてくるのを必死でこらえた。そうだ音楽でも聞こう。 イヤホンを取り出し、一番うるさそうなロックをかける。しかし、ボーカルの声は雑音のように意識から遠のき、一定の間隔で調子よく刻むドラムの音だけが耳の中に残る。その心地よいリズムにフッと眠りに誘い込まれそうになった。あぶない、あぶない。寝てしまうところだった。音楽はダメだ。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加