寝られない男

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トレーの上のメインディッシュのパッケージを開けながらさっきの事件を振り返る。 しかし、たとえ夢だとはいえ、よくあんな重たいヤツを投げ飛ばしたな。火事場の馬鹿力とはよく言ったもんだ。 そうだ、もしかして、さっきスマホで撮られた写真が今ごろツイッターで拡散しているかも。到着したら新聞記者やテレビカメラが空港で待ってて取材を受けるってことになるかもしれないぞ。でもって明日の朝刊には「お手柄会社員。機内でスリを投げ飛ばす」って記事がバーンと新聞に載る。おれは一躍有名人になるか もな。 怪我の功名とはよくいったもんだ。予約の入れ忘れが有名人につながるとはな。秘書の女史にはバカヤローなんて言って悪かった。小さなミスに目くじら立てるなんてどうかしていた。なんか土産でも買って帰ってやろう。 前祝いだ。到着まで2時間足らず、ワインも少しぐらいなら飲んでも大丈夫だろう。  油断していた。確かに油断していた。 食事のあと、これまでの疲れと、事件の高揚感とさらに酔いも手伝って、不覚にも眠ってしまった。
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