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パソコンの電源を切って、そのままベッドに体を放り出した。何に対してもやる気が起きない。漫画も、日常生活も、これから始まる就職活動も、全部だ。いっそのこと、すべての時間が止まってしまえば良いのに。そんな風に投げやりになると、どうしてもまた現実へと引き戻されて、悪循環が続いてしまう。この状況から抜け出す方法が分からないから、無理矢理に眠ろうとする。でもきっと、眠ってしまえば、メイの夢を見る。思い出して、余計に悲しい気持ちになる。だから、覚醒と睡眠の間で意識を引き延ばしながら、時が進むのをじっと待っていた。
やがてカーテン越しに外は夜に染まり始め、部屋の中は暗がりで満たされる。
重たい体を起こして部屋の電気をつけた。それから、鞄の中にある空の水筒を取り出そうとして、漫研の新刊が一緒に入っているのに気が付いた。昼間になつみからもらった物だ。そこには、卒業した先輩たちの作品に並び、わたしやなつみのも収録されていた。なつみは、純粋に上手いと思う。先輩たちにも引けを取らない実力がある。本人は出版社に持ち込みもしていて、漫画家になりたいと公言している。わたしだって、漫画家になりたい。その気持ちは確かにある。けれど、今は自分の漫画を読もうとは思えなかった。とてもそんな気分にはなれない。
自分の拠り所がない今、本当に、わたしには何も残されてはいないのかもしれない。
喉が渇いた。水を飲むため、キッチンに向かおうと扉を開ける。
部屋を出て、階段を下り始めたその時だった。
猫の鳴き声がした。
それは自分の部屋から聞こえてきた。耳を疑ったわたしは、勢いよく部屋の扉を開ける。
瞬間、唖然とした。それこそ、本当にすべての時間が止まってしまったかのように。
メイが、ベッドの上であくびをしていた。
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