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その後、夕食の席ではほとんど誰一人として口を利かなかった。まるでお通夜みたいな食事は、ろくに喉を通らなかった。
結局ほとんどを残して夕食を終えると、すぐにお風呂に入った。湯船に浸かりながら一人でもやもやと考え込んでいると、徐々に得体のしれない不安が込み上げてきて、いつもの半分も入らずに出てしまった。
部屋に戻ると、メイはまだちゃんとそこにいた。ベッドの上で丸くなっている。思わず胸をなでおろす思いで息をついた。後ろ手で扉を閉めてから、メイの隣に腰を下ろす。メイは丹念に体中を舐めている。その様子を見ていると、わたしの中でずっと折りたたまれていたものが、ゆっくりと開いていく感覚がした。その中身はどこか懐かしさを帯びていて、ささやかな余裕をわたしに与えてくれた。
スマートフォンを手に取り、メッセージを開く。なつみからの通知が届いていた。
「こはる大丈夫? 顔色悪かったけど、何かあった?」
メッセージが送られたのは昼間だ。すでに五時間以上も放置されていた。わたしは、少し考えてから、今から電話がしたいと、なつみにメッセージを送った。
たぶん、話しても信じてはもらえないだろう。だからせめて、メイがここにいるということを、自分だけでも心から信じてあげたかった。そのための勇気が、ほんの少し欲しかった。
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