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カラーキス
ただひたすら絵を描くことが好きだった。
僕の名前は白神令。名前だけじゃ女の子によく間違われる。その上、体も小さく華奢で男らしいとはとても言えない。
そんな僕が通っているのは、色森高等学校。田舎にある普通の県立高校だ。商業科があるため女性のほうが多く、男子にとっては素晴らしい環境...と思う人もいるが、僕に関してはそう思わない。
なぜなら僕は恋をしたことが無いから。
だから、こうやって、美術室を放課後借りて、絵を描いている方が僕の性分にあっている。ふと、外を見れば、サッカー部や野球部が練習し、青春を謳歌している。マネージャーが部員にボトルを渡し、受け取った彼らは優しい笑顔を見せる。眩しい、僕には無関係な色。
僕は絵を描くときに色に重点を置いている。鮮やかに、個性を消さないように。だから、僕の絵はカラフルなものばかり。特に僕の好きな、赤、青、緑、黄、黒の五色をふんだんに使うんだ。なぜ僕がこうも色の魅力にとりつかれているかは分からない。本能的なものかな。
僕が今描いている絵も完成間近だ。タイトルは『カラーキス』。真っ白だった紙と、色たちが口づけを交わすというコンセプト。あと少しで完...
ドンッ。突然扉があいた。
「令!早く帰ろうぜ!」
彼の名前は坂井透。僕の数少ない友達。バスケ部に所属する青春謳歌組だが、何かと気が合う。バスケの練習が終わると、こうやって迎えに来てくれる。僕にとっては帰宅の時間を知らせてくれるアラームのようなもの。
「うん。ちょっと片付けるから待ってて」
絵の完成は明日になりそうだ。
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