カラーキス

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――透と並んで、校門に向かって歩く。  「なあ、今度はどんな絵を描いているんだ?」  「んー、完成するまで内緒かなー」  「ふーん。ま、どうせカラフルな絵なんだろうけど」  ぎくっ、図星とはまさにこのこと。ちょうど1階の廊下にさしかかったところ、  「ねぇ。お二人さんは今帰るところ?」  聞き慣れた明るい声。振り返ると、黒髪の女の子がいた。彼女の名前は黒川有栖(くろかわありす)。長い髪を一つに結って、大きなポニーテールが出来ている。何か面白いことはないかと、ワクワクしている様子。  「そうだけど、有栖は何やってんだ?」  「んー?今日の英語の時間さ、宿題忘れちゃったじゃん?それで、居残りしてたの」  彼女は笑いながら答える。有栖は元気だが、やんちゃでもあり、優等生とは言えない。透はやれやれといった表情を浮かべている。  「どーせ、令はお絵かき。透はバスケってとこかしら?」  「うん。そうだよ。次の絵は自信作なんだ」  有栖の目が輝く。何それみたい!という表情だと思う。たぶん。  そのとき、前から鬼の形相を浮かべた英語の小岩先生が向かってきた。  「宿題終わらせないで、何してるのー!!」  どうやら、有栖は居残りが終わってなかったらしい。  連行される有栖は涙を浮かべ、手を振ってきた。僕ら二人も手を振り返し、また帰路に戻った。  あたりはすっかり暗くなっていた。部活のこと、授業のこと、今の教室の席のこと。他愛のない話を透としていると、いつもの交差点へ。僕はこのまままっすぐ、透は右の横断歩道へ向かう。  お互いに別れの挨拶をする。ここから、僕の家はあと少し。歩いていると、すぐに白神のネームプレートがみえる。鍵を取り出し、玄関を開けると、  「おかえりー」  といつもと変わらない声が聞こえる。母の声だ。  「ただいま」  ここからは、いつも通り。ご飯を食べ、風呂に入り、すぐに就寝。宿題は今日ない気がする。自分のための解釈。明日の絵の完成が楽しみだな。ゆっくり目をつむる。 しかし、翌日、僕はあるモノを失ってしまう。    
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