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不思議な場所にいた。
僕は絵本の中のような世界にいて、さながら不思議の国の住人。
ただ、僕の好きなカラフルな世界ではなく、ひたすら無機質な白い世界。
「彼ら」が僕の色を奪おうと、追ってくる。
逃げなきゃ、息苦しい。僕の思いとは裏腹に足は速く動かない。ピタッと、かたをつかまれ、そして飲まれた。
パッと、目を覚ます。
はあ、嫌な夢を見た。額に汗をかいているのが分かる。たまにこういう夢を見るけど、今回のはかなりリア...ん?変な違和感がある。寝室の天井は白いのだが、あまりに白すぎるというか。まるで白紙をみているよう。
僕は何を見ている?動悸が止まらない。焦っているのが自分でも分かる。ギュッと目をつむる。そのまま、額に手をやる。止まらない汗。大量の汗を手で拭き取り、顔の前に手を持ってくる。そして、ゆっくり目を開ける。
そこには、色を失った、真っ白な手があった。
息をのむ。周りを見渡すと、白い机、白いテレビ、白い制服、そして僕の白い体。何もかもが色を失っていた。嫌な夢、そんなモノだと思った。しかし、夢の割には意識がはっきりとしていて、僕は別の言い訳を考えていた。
ベットをおりる。朝食を食べよう。白いドアを開け、階段を降りる。リビングの扉を開けると、白いお母さんがいた。
「おはよー。どうしたの、そんな顔をして?」
「お母さん...助けて...」
泣き声混じりの声が、リビングに響いた。
こうして、僕は突然色を失った。
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