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その人は、なんだか驚いたような顔をした。
「――小森、庄太郎殿? ……おいくつで?」
「十歳になります」
たっぷりと間をあけてから、唐突に「ほう」と言った。
たぶん、こんな挨拶も出来ない、もっと「小さな子」だと思われていたんだろうと思う。
庄太郎は、どういうわけだか同い年の友人達の誰よりもひ弱で小さくて、一つも二つも幼く見られることが多くて、とても悔しい。
「あの、お名を伺っても?」
けれど、その人は、困惑したような表情で口を濁した。
「お医者さまなのですか?」
「いえいえ」
「だって、手を治してくださいました」
「それは、心得というものですよ」
「でも、あの、ほんとうに、助かりました。剣術が出来なくなったら、どうしようかと思ったのです」
「まあしかし、癖になるといけませんから、しばらくはあまり無茶をなさっちゃいけません。二、三日、お稽古はお休みなさい」
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