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「さあて、寅次さん。ご相談というのは?」
「その、だな。俺は・・・・・・うにゃ」
福之助が問うと、急に寅次がもごもごしやがって要領を得ねえ。「他言しませんよ? 安心してどうぞ」と背を押され、ようやくぽつぽつと語り始めた。
「実はな。俺の主人が最近ハムスターを飼い始めたんだが。俺は猫だってのにそいつが・・・・・・大福のことが可愛くて仕方ねえんだあ!」
言葉尻を叫ぶように吐き出し、頬を桃色に染めて俯いちまった。
「良いじゃないですか。種族が違ったって僕は愛情を育めると思いますよ」
愛情の二文字に桃色どころか真っ赤な顔で首を振る寅次。
「いや!弟が出来たみたいでよ。この間、昼寝の時につい大福をこう・・・・・・抱きしめて寝ちまったんだ!」
「微笑ましいじゃないですか」
「それがよ。主人にそのあり得ない寝姿の動画を撮られてSNSで公開さた挙句、テレビでも流れちまったんだよ!それを仲間の奴らに見られて笑われてな・・・・・・面目丸潰れさ」
なるほど。恐らく福之助の頭には『?』がぎっしりだろうが。辛うじて招き堂にもテレビはあるからな。『おもしろペット大集合!』とかだろ?
「俺はどうしたらいいんだ。恥ずかしくてナワバリも歩けねえ」
背を丸めて項垂れる寅次に、福之助は静かに微笑みかけた。
「寅次さん。大福さんを嫌いになれますか?」
「えっ・・・・・・」
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