第1章

7/7
前へ
/7ページ
次へ
 学校から帰宅した紀章は、真っ先に冷蔵庫に向かい、何か飲み物と、食べられるものを物色し始めた。 「おっ!これは、美味そう~!!」  紀章は、冷蔵庫に入っていた、綺麗な色の林檎(りんご)を見つけると、一つ冷蔵庫から取り出して、袖で擦(こす)ってから、林檎を丸ごとかぶりついてベランダに出た。  蜜が沢山詰まった林檎を食べながら、紀章は、また、「ロビンソン」を口ずさんでいた。  数年後、紀章も母の伸子も、精神科の治療を受けて、その、異常な偏食を克服していた。 「よかった……これで、よかったんだ……」  紀章は、そう呟いてから、ベランダから見える風景を穏やかな気持ちで、眺めていた。  そこには、サナギから孵化(ふか)したばかりの、綺麗なアゲハ蝶が、空の中を優雅に、そして、自由に舞い飛んでいた。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加