1:日常が砕けた

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 背中を丸めた部下を見送ってから廊下に出て、竹内はため息を漏らした。無意識だった。  これで何人目の病院送りか。しみじみとそう思った。  昔、竹内が新人だった頃、こういう病気はもっと上の世代のものだった。低年齢化が進んだというべきなのか、ストレスが多すぎるというべきなのか。どちらも当たっているような気がするが、この手の面談をするたびに自分の内側にも同じような重さが降り積もっていくのは実感していた。  だがそれでも、竹内はサラリーマン生活に絶望はしていない。なぜなら、取り立てた希望も持っていないからだ。希望と絶望は表裏一体、過ぎた希望を持たなければ絶望することもない。  ただ淡々と毎日、目標のためのミッションに取り組んでいって、将来必ずやってくる定年退職の日まで会社勤めを続けようと思っているだけのことである。  幸いにも就職氷河期第一期とも言われた過酷な就職戦線を生き残り、一応大手に数えられる製薬会社に就職できた。日本に数多ある株式会社のうち、『大企業』に分類されるのはたった二パーセントにしか過ぎない。     
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