僕と彼女の

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「ねえ、しってる?眠りっていうのは、一時的な死っていう考え方があるそうよ。」 ある日、なんの脈絡もなく彼女は言った。 そういう考え方もあるのかと思いはしたが、なぜ急に彼女がそんなことを告げるのかがわからない。また、それを告げる上で彼女のメリットもわからない。 それでも彼女は言葉を続けた。 「眠りが死ならば、自ら眠る人間は毎日ささやかな自殺をしてるってことになる、って考えるとなかなか趣深くないかしら。」 確かに理屈としては間違ってない。ただ眠りをおろそかにすると、ほんとに死ぬのだから人間が自ら眠るのは生きるための延命措置なんじゃないのか。なんてこともひそかにおもう。 それでもやはり彼女は語り続ける。 「そして、自ら眠るのが自殺なら、共に眠るのは心中のようじゃないかしら。」 心中。その言葉が出てきてようやくわかった。彼女は死にたがり。彼女は自分嫌い。そして彼女はあわよくば好きな人間に殺されたいと笑いながらいうかわった人種なのだ。 そして彼女はこれが言いたかったのだと言わんばかりにこちらに言葉を投げかける。 「ねえ、大好きなあなた。お願いだから私とささやかな心中をしてくれないかしら。」 彼女は僕をじっと見つめ、そんな言葉を投げかけてきた。彼女は愛用するベットに座りこっちに来いと言わんばかりにベットをポンポンと叩いてる。 ああ、彼女は一度やりたいことを決めればなかなか諦めてくれないんだ。そういうとこも好きだけど。そんなことを思いながら、素っ気ない返事を返す。 「ああ、だなんて素っ気なさ過ぎないかしら。」 返事に少し不服だったらしい彼女は頬をふくらませながらつげる。 彼女のベッドに入り、共に横になる。 「ならば、一緒に心中しよう。いっそずっと2人きりで眠ってしまおうか。」 彼女が喜びそうな言葉をなるべく選び、彼女に告げると彼女は先程までの不機嫌な顔を明るく今にも踊りだしそうな嬉しそうな顔に変えた。 「おやすみ。」 互いに挨拶を告げ、そして僕らは眠りについた。 同じベットに入り眠ることがささやかな心中になるのなら死にたがりの彼女からしたらとても楽しいだろう。そんなことを考えながら、僕自身も思考を放棄し眠りに意識を任せた。
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