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玄関を開けると、直ぐに蒼が走って来た。
「はるー」
俺の名前を呼びながら駆け寄って来る蒼が、本当に可愛らしくて、「ただいま」と声を掛ける。しかし、どうやら俺の帰りを待っていたという訳ではなく、蒼はおかえりの返事もせずに、俺の手を取ると直ぐにリビングへ引っ張って行く。
「蒼、どうした?」と聞いても答えてくれず、真っ直ぐに前を向いて進んで行く。
リビングに入ると直ぐに、テレビの前に敷いてあるラグいっぱいに作られたプラレールが目に入る。
駅やトンネルもあって、立派な鉄橋も作られている。そこを、ドクターイエローとはやぶさの二台の新幹線が、颯爽と走っていた。
「すごいなー!」
お世辞ではなく、本当にそう思った。
「かっこいい?」
自慢気に聞いてくる蒼に、「うん、かっこいい」と答える。
「ほくが、つくったの」
またもや自慢気に言ってくる蒼に、「本当か?すごいな!」と大袈裟に驚いて、頭を撫でてやると、ニッコリと満足そうに微笑んだ。
きっと、奈緒が手伝ってやったんだろうけど、それでもこの出来栄えは凄いと感心していた。
「蒼くん、一人で全部作ったのよ」
背後から声がして振り向くと、奈緒がキッチンからこちらに向かって歩いて来ていた。
「私は、何にも手伝ってないの。ね、蒼くん?」
「うん」と大きく頷くと、「ぜーんぶ、つくったよ」と言って、蒼は胸を張る。誇らし気なその態度が微笑ましい。
「帰ってくるなり、すごく集中して作ってたから、私は手を出さずにご飯の支度してたの。ハルに似たのかな?特に橋のところは、気合い入れて作ったみたい。高さが合わなくて、何度も作り直してたけど、最後までやり遂げたんだよ」
再び夢中で遊び始めた蒼に視線を送りながら、奈緒はそんなことを伝えて来る。
「そう……」
自然と俺もそう返す事が出来た。
家に帰り着くまでウダウダ考えていた答えを、奈緒が教えてくれた。
こんな感じでいいんだな…妙に納得出来た。
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