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「そう」
俺は、そう答えるしか出来なかった。
うちは、代々医者家系だ。
父親は、消化器外科医
母親は、内科医
父方の叔父達やいとこ達も医者だらけだった。
そんな両親達が出した答えならば、そうするしかないんだろう。
体を背もたれに預けて、ふーっと鼻から息を吐いた。
「うちのマンションの同じ階の部屋が売りに出されてたから、買おうと思ってるの。ちょうど離婚の時の慰謝料で買える金額だったから」
はっ?
「そこに、引っ越してくれない?」
「はあ?」
突然、明後日の方向に飛んだ話に、意味がわからず、思ったより大きな声を出してしまい自分でもびっくりする。
「来週末から、入院して治療を始めるのよ」
「はぁー」
「だから、その間 蒼の面倒を見て欲しいの」
「俺が?」
「そうよ」
「なんで? 母さんは?」
蒼とは、姉さんの一人息子、蒼亮の事で、離婚してシングルマザーの姉さんは、蒼亮が感染症で長く保育園を休まないといけない時や、仕事が忙しい時などは、たまに実家に預けていた。
母さんも、医師として働いてはいるが、自宅と繋がった診療所で勤務しているため、仕事中は俺たちの叔母にあたる母さんの妹に家に来てもらい、実家で蒼輔の面倒を見てもらっていた。
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