7月22日

3/8
182人が本棚に入れています
本棚に追加
/144ページ
「そう」 俺は、そう答えるしか出来なかった。 うちは、代々医者家系だ。 父親は、消化器外科医 母親は、内科医 父方の叔父達やいとこ達も医者だらけだった。 そんな両親達が出した答えならば、そうするしかないんだろう。 体を背もたれに預けて、ふーっと鼻から息を吐いた。 「うちのマンションの同じ階の部屋が売りに出されてたから、買おうと思ってるの。ちょうど離婚の時の慰謝料で買える金額だったから」 はっ? 「そこに、引っ越してくれない?」 「はあ?」 突然、明後日の方向に飛んだ話に、意味がわからず、思ったより大きな声を出してしまい自分でもびっくりする。 「来週末から、入院して治療を始めるのよ」 「はぁー」 「だから、その間 蒼の面倒を見て欲しいの」 「俺が?」 「そうよ」 「なんで? 母さんは?」 蒼とは、姉さんの一人息子、蒼亮(そうすけ)の事で、離婚してシングルマザーの姉さんは、蒼亮が感染症で長く保育園を休まないといけない時や、仕事が忙しい時などは、たまに実家に預けていた。 母さんも、医師として働いてはいるが、自宅と繋がった診療所で勤務しているため、仕事中は俺たちの叔母にあたる母さんの妹に家に来てもらい、実家で蒼輔の面倒を見てもらっていた。     
/144ページ

最初のコメントを投稿しよう!