7月31日

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部長に仕事の事を相談して、急いで帰る。 マンションに着くと、蒼がこの前のように泣き疲れて寝てたらいけないと思い、インターフォンは鳴らさずに、ドアを開けた。 シーンと静まり返った部屋の中。 「ただいま」と、小さな声で言うが返事はなかった。 玄関に、蒼と奈緒の靴はあるから帰って来てるはずだ。 物音を立てないように、ゆっくりと部屋の中へと進んでいく。 リビングへと続くドアを開け、もう一度「ただいま」と小さな声で言いながら辺りを見回すが、蒼も奈緒もいなかった。 少しの間があって、人の気配を感じたのでそちらを見ると、蒼の部屋から奈緒が出てきた。 「おかえり」 その場で立ち止まって、小さな声でそう言う奈緒に、「ただいま」と俺もまた小さな声で返事をした。 「泣き疲れて寝ちゃった」 微かな笑みを浮かべてはいるものの、奈緒の顔は明らかに疲れていた。 俺も、蒼の部屋の前まで行き、中を覗き込むと、ベッドに横たわり寝息を立てている蒼が見えた。 この前の様に、泣いてる蒼をずっと抱きながら歩き回ってくれたのかと思うと、申し訳なさでいっぱいになる。 「ごめんな、大変だったろう?」 そんな俺の言葉に、奈緒はゆっくりと首を横に振った。 「蒼くん、今日は香織さんの前で泣けたから」 穏やかな口調で、何かを確認するようにそう言った奈緒。 「我慢せずに、ちゃんと泣けたから」 もう一度繰り返すようにそう言って、よかったという代わりに、口角を上げた表情は、切なそうでもあった。 その言葉と表情が、ずっしりと重量を持って心の中に届いた。 「そう」 深く頷いて、それを受け止める。 「うん」 今度は、奈緒が頷いた。 その短い返事が、じーんと心に響いた。
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