7月31日

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明日、午前中の診療を終えた母が午後からこちらに来る。姉の見舞いと、蒼と俺の様子を見るために。 一泊して、日曜日の夜に帰る予定にしていた。 だから、週末に奈緒がここに来る必要はなくて、今度来るのは月曜日。 月曜日の夕方、蒼を保育園に迎えに行ってくれて、退院して来た姉に引き渡して帰る。 今までのように、夕飯の支度も姉さんの体調次第では手伝ってくれるようだが、通常の仕事に戻る俺が、奈緒のいる時間に帰って来る事はないし、帰って来たからと行って会う理由もなくなる。 だから、今が最後の時間だった。 夕飯の支度を終えた奈緒が、バックを持ってキッチンから出てくる。 蒼と共に、玄関まで見送る。 靴を履き、振り返った奈緒は、蒼に「蒼くん、またね」と腰を屈めて挨拶をし、タッチと手を合わせた。蒼も、うんと笑顔で返す。 その、またねと言う言葉は、もちろん俺に掛けられる事はなくて、そんな当たり前の事に淋しさを覚える。 姿勢を戻した奈緒は、俺の方を向くと、「じゃあ」と短い言葉を掛けてくる。 俺も、軽く頷いて「じゃあ」と返す。 自分では、笑顔を作ったつもりだったが、上手く出来たかは自信がなかった。 そんな俺に背を向けて、奈緒は出て行く。 その背中を見送るのは、淋しかった。 でも、もう声はかけない。 手も伸ばさない。 黙って、じっと見送った。
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