8月3日

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姉の病室のある階でエレベーターを降りると、降りてすぐのところにある自販機へ蒼が駆け寄る。 お気に入りのりんごジュースを見つけて、「おいしそう!」と、遠回しに購入を要求して来るが、おやつを食べたばかりだから、お昼ごはんの時にと説得するも、なかなか応じない。 『悠人は、言えば買ってくれると思われてるんだよ!』と叱責する奈緒の声が聞こえてきそうだ。 はぁーっと、小さなため息を吐いて、「ほら、いくよ」と、自販機にべったり張り付いている蒼を横目に、姉の病室へ歩き出す。 自販機から姉の病室の入り口までは、曲がり角も遮る物もなく、見通せるので、迷うことはないだろうと思いながらも、心臓はドキドキだ。 後ろ髪引かれながらも、どうにか振り向かず病室の前まで来ることが出来た。 いつもは閉められている病室のドアが開いており、廊下から目隠しになるように引かれたカーテンは閉ざされていた。 処置か診察でもあっているのかな?と足を止め、ノックをするか迷っていると、中から話し声が聞こえる。     
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