8月3日

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「悠人と話したの?」 不意に聞こえてきた自分の名前に驚き、その場に佇む。 「もういいかなと思って……」 「…………それでいいの、本当に?」 「…………」 「この前の検査では、問題なかったんでしょう?先生から妊娠の許可も下りたのに?」 「……もう、悠人の中では過ぎたことなのに、……掘り起こして迷惑かけたくない」 「…………」 「それに……、5年前にあんな嘘ついて傷付けたのに……、いまさら……」 パタパタパタパタと、駆け寄ってくる足音に、二人の会話が止まる。 足音の主である蒼は、病室の前に突っ立っている俺の横で一旦止まると、不思議そうに俺の顔を見上げて「なにしてるの?」と声を掛けてきた。 そして、カーテンを勢いよく開けて、「ママー」と病室へ入って行った。 開かれたカーテンの向こうから、目を見開いた奈緒が俺を見つめている。 「なおちゃん、きてたの?」と、蒼が問いかけるが、それに返事も出来ないほどの驚きと動揺を隠せずにいた。
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