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7月29日
月曜日
いつもより早く仕事を終えて、家路を辿る。
部長に事情を話して、今日と明日だけは、残業せずに帰してもらう事になっていた。
とはいっても、すでに6時を過ぎている。家に着くのは、6時半を過ぎることになり、奈緒に迷惑をかけてしまうと、その足取りは、いつもより早くなる。しかし、気持ちはなかなか付いて来ていなかった。
土曜日。奈緒は最後に微かな笑みを見せて帰って行った。しかし、その背中は疲れ切っており、身体だけの疲労ではないように感じた。
奈緒にあんな風に言われて、 手伝いを頼む事を決意したのだが、迷いがもうないのかと聞かれると、それは違っていて、正直、これからどんな顔をして奈緒に会えばいいのかわからないし、どんな態度を取ればいいのかも分からなかった。
普通でいいんだろうけど……
その普通が、わからない。
五年前と同じで言い訳なく。
かと言って、甥っ子のお迎えを頼んでいる姉の知人というのでは、素っ気ない気がする。
今の俺たちの関係のちょうどいい距離感が掴めなくて悩んでいる自分を俯瞰して、何をそんなに考え込む必要があるんだと思う。
今日と明日。蒼の受け渡しをするだけ、それだけのことなのに……。
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