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ここは、高校の保健室。武先輩は、体調不良を起こしてよく訪れる生徒だ。そして、それに対応している私は、保健委員の一年、鈴木雛子。保健委員は昼休みと放課後に先生の手伝いの当番があり、私は今月の昼休み当番なのだ。
入学して保健委員となり、初の当番が回ってきた。まだ五月で新入生気分が抜けきらないが、保健室でお弁当を食べるというちょっとした特別感にウキウキとしていた。そんな私の前に現れたのが武先輩だ。
武先輩は顔色が悪く、気分が良くないからベッドで休ませて欲しいと毎日のように来る。常連のようで、保健の先生は特に気にした様子もなく仮眠を許していた。
でも、普通気になるだろう。そんなに体調が悪いなら、病院に行った方が良いのではないかと心配にもなってくるではないか。だから、私は声を掛けた。それが武先輩と話すようになったきっかけだった。
武先輩は、家庭の都合でアルバイト生活を送っているとのことだった。家庭のことに首を突っ込むのは気が引けたので、どんな都合なのかは聞いていないが。でも、アルバイトのせいで慢性的に寝不足で顔色が悪い。その結果、毎日のように昼休みに保健室で仮眠する生活になっているのだ。
それに加えて、偏食で食べることに意欲が薄い。顔色が悪いのは、寝不足だけでなく、食べていないから、血糖値が低いせいもあるだろう。
こんな弱々しい人、初めて見た。放っておいたら死んでしまうのではないかと、割と真剣に心配になる。だから、私はお弁当を多めに持ってくるようになった。無理矢理にでも、武先輩に食べさせるためだ。
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