おまけ

3/7
165人が本棚に入れています
本棚に追加
/58ページ
母子共に問題なく帝王切開を終えることが出来たのは、不幸中の幸いだったのだが、赤ちゃんは生まれてすぐにN ICUに収容された。 数日後に山田ちゃんの病室を訪れると、山田ちゃんが旦那さんを叱咤激励している最中で…… N ICUで、保育器に入った我が子を見て、ショックを受けた旦那さんが、「俺が付いて行けばこんな事にはならなかったかもしれないのに……ごめん……ごめん」と何度も謝っているのを、「もう、父親なんだよ!しっかりしてよ!そんな事言う前に、あの子に出来る事考えてよ!」と叱りつけていた。 病室の前でその声を聞いてしまった私は、どうしようかと悩んでいると、今度は声のトーンを落として、「これから、あの子を守っていかないといけないんだよ……」と、最後は涙声で言っていた。 もちろん山田ちゃんもショックだっただろうし、自分を責める気持ちもあったんだと思う。だからこそ、自分に言い聞かせるように、旦那さんにもそんな言葉を投げ掛けたのかなと思った。 新人の頃は、仕事中にトイレに隠れて泣いていた山田ちゃんが強くなったなぁと感心すると共に、少しだけ寂しさを感じて、私はその場を去った。 その後、みんなの心配を他所に、山田ちゃん夫婦の愛娘はすくすくと成長し、一ヶ月でN ICUを卒業し、今では成長曲線の上限に掛かるくらいの健康優良児だ。 渚(なぎさ)ちゃんと名付けられて、美男美女のご両親を受け継いで、お目目くりくりの、まつげクルリンで、色白の本当に可愛らしい赤ちゃんで、そのぽちゃぽちゃ振りが、また可愛らしさを倍増させている。 そんな経緯もあり、旦那さんの溺愛振りは凄いらしく、山田ちゃんはその事をボヤいているし、子育てに関しては、寝れないし、食べる暇もないし、洗濯ものは乾かないしと愚痴を零せばキリがないと言うものの、そう言いながらも幸せそうだ。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!