*48*喪失の記憶

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「んっ、は……負け犬の僕には、もう何も残ってない……それなのに、姉様まで取り上げられたら、僕は、僕は……っ!」  一心不乱に腰を打ちつける男に、穂花(ほのか)はされるがままでいるしかなかった。 「姉様だけは、僕のものだ……っ!」  そうと叫んだ男に、ばつんと腰を打ちつけられた刹那、穂花の視界に激しく星が飛び散った。  奥底に埋め込まれたものがどくりと脈打ち、胎に直接熱を吐き出す。 「っく、ぅ…………はぁっ!」  どれほどの欲を注がれていただろうか。  ぶるりと身じろぎ、最後の一滴まで余すことなく穂花のなかを満たした男が、力尽きたようになだれ込んでくる。  絶頂の余韻に放り出されていた穂花は、そのとき、彼の肩を滑り落ちた(あま)色の髪を目の当たりにし、はたと呼吸を止める。 「……姉様……」  かすれた声で穂花を呼ぶ男。  その木もれ陽を宿したような常磐(ときわ)色の瞳にも、見覚えがあった。  目の前の面影を知っている。  だが彼は、穂花の知っている〝あの子〟とは違っていた。 「ねぇ、姉様」  もう一度、天色の髪の彼が穂花を呼ぶ。  常磐の奥に、切実な色をまとわせて。
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