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「んっ、は……負け犬の僕には、もう何も残ってない……それなのに、姉様まで取り上げられたら、僕は、僕は……っ!」
一心不乱に腰を打ちつける男に、穂花はされるがままでいるしかなかった。
「姉様だけは、僕のものだ……っ!」
そうと叫んだ男に、ばつんと腰を打ちつけられた刹那、穂花の視界に激しく星が飛び散った。
奥底に埋め込まれたものがどくりと脈打ち、胎に直接熱を吐き出す。
「っく、ぅ…………はぁっ!」
どれほどの欲を注がれていただろうか。
ぶるりと身じろぎ、最後の一滴まで余すことなく穂花のなかを満たした男が、力尽きたようになだれ込んでくる。
絶頂の余韻に放り出されていた穂花は、そのとき、彼の肩を滑り落ちた天色の髪を目の当たりにし、はたと呼吸を止める。
「……姉様……」
かすれた声で穂花を呼ぶ男。
その木もれ陽を宿したような常磐色の瞳にも、見覚えがあった。
目の前の面影を知っている。
だが彼は、穂花の知っている〝あの子〟とは違っていた。
「ねぇ、姉様」
もう一度、天色の髪の彼が穂花を呼ぶ。
常磐の奥に、切実な色をまとわせて。
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