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「――んぅっ!?」
噛みつかれた、という表現はあまりに温い。
下唇に歯を立て、驚愕に開かれたわずかな隙間より、口内へ容赦なく侵入してくるもの……ぬるりとした舌が、穂花のそれを絡め取る。
同時に痛いほど抱き込まれ、胸を押し返そうとした手が宙を掻く。
「……っはぁ……んっ……んんっ……」
甘ったるい吐息が口内でくぐもり、鼓膜を犯す。
蹂躙するような口付けは、執拗に繰り返された。
嚥下の暇さえ与えられず、誰のものかわからない唾液があふれ、顎をつたう。
まさに溺れるような口付けであった。
「ふふ……そう……わたしに身を委ねてくださいまし」
酸欠によって朦朧とする意識に囁かれるは、歓喜の言葉か。
「貴女様は厭だ厭だと仰りつつも、とても可愛らしく啼かれるので……今宵も愉しみじゃ……」
うっとりとした睦言のかたわらに、寝間着の帯がほどかれる。
くつろげられた純白の袷。あらわになる胸許。
「――お声、我慢なさらないでくださいね?」
最後に告げた唇が、胸許の蕾へふれる。
その熱たるや、烈火のごとき。
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